寄生虫ダイエットの話

食べたものをかすめ取っていく寄生虫が腹の中にいれば痩せるはずだ、と信じられいた。ヴィクトリア朝時代に、スタイルを気にする女性向けに「サナダムシ・タブレット」なるものが売りだされた。その発想の背景には、「貧乏人は痩せている。そして彼らのほとんどは腹に寄生虫を飼っている」というロジックがあった。その昔、私が子どもだった時分には、食欲旺盛な子どもは「お腹の中に虫でもいるんじゃないの」とからかわれたものだった。寄生虫によって体重減少が引き起こされることは現在ではよく知られた事実だた、それは栄養分を寄生虫にとられるからではない。サイトカインなどの分泌物が脳に作用して食欲を抑えるのである。寄生虫に感染すると、宿主の体内でサイトカインなどの分泌が高まる。これによって食欲の低下が引き起こされ、結果として体重が減少するのである。

サナダムシは大半の寄生虫と同じように比較的無害だが、サナダムシに対する過敏症の人は神経障害を起こして最悪死亡する場合もある。人間に感染する最大のサナダムシは、生魚を食べることによって体内に侵入する。

「世にも奇妙な人体実験の歴史」トレヴァー・ノートン 著 赤根洋子訳 文藝春秋 2012