イリヤ・イワノフの「ヒューマンジー」実験

ソビエトは自分たちがいかに科学的で、帝国主義者よりも正しく進化論を理解しているかを、やっきになって証明しようとした。その結果、ミハイル・ブルガーコフの小説を思わせるシュールな出来事が起こる。一九二六年、イリヤ・イワノフという名の科学者が、人間が類人猿の子孫であることを証明する実験の承認を得た。その実験とは、人間とチンパンジーを掛け合わせた「ヒューマンジー」を作るというものだった。イワノフは西アフリカにあるフランスの研究施設に赴き、三頭のメスのチンパンジーに人間の精子を人工授精する。しかし、その際、イワノフは時分の精液は使用しなかった。なぜなら彼は、ヨーロッパ人よりもアフリカ人のほうが類人猿に近いという植民地主義的な思想の持ち主だったからだ。実験は失敗に終わるが、イワノフはその後、世界で初めてチンパンジーの人工繁殖させ、ハバナ郊外に大きな動物園を所有していたキューバの資産家、ロサリア・アプレウに近づく。イワノフは彼女が飼育するオスのチンパンジーの精子を使い、後に「G」と称されるロシア人志願者に人工授精を試みようとしたが、この事実は公表されず、Gはその後歴史から姿を消した。

「ほとんど想像すらされない奇妙な生き物たちの記録」カスパー・ヘンダーソン著 岸田麻矢訳 エクスナレッジ 2014

YouTube : Joseph Stalin’s Humanzee Experiments [FULL DOCUMENTARY]