「索引 ~の歴史 書物史を変えた大発明」 デニス・ダンカン(小野木明恵 訳)光文社 2023
学術書やノンフィクションなどの書籍の巻末に当たり前のように付されている「索引」の歴史をそれこそ物事をアルファベット順に並べることから現代のコンピューターによる自動生成や電子書籍における索引の問題までその変遷と影響について延べた本。
普段、あまり索引を活用することがなく索引についてちゃんと考えたこともあまりなかったので、主題索引と用語索引の違いや索引が指す書籍内のロケーションの問題(ページ番号の発明は偉大であったが、写本では引き写すさいに判型の違いなどからページ数が原著と異なることが多く、その価値を発揮するには印刷技術の発展を待つ必要があった)などいろいろ新たな知見と考えさせられる事柄が多かった。 面白かったのが、18世紀初頭の英国のトーリー党とホイッグ党が激しく対立し、対立する党派の人物が書いた書籍に対して悪意を持った索引を作成して誹謗中傷を行ったという話で、索引がもつ批評性とデリダの脱構築をちょっと思わせるようなそのメタな手法がなんとも興味深い。
あと、これも知らなくて吃驚したけど、英国には索引は索引家と呼ばれるプロが作るもので索引家の組合である索引家協会まであるんだそうだ。てっきり作者や編集者が作るものだと思ってた。
目次
序文
第1章 順序について - アルファベット順の配列
第2章 索引の誕生 - 説教と数育
第3章 もしそれがなければ、どうなるのだろうか? - ページ番号の奇跡
第4章 地図もしくは領土 - 試される素引
第5章 いまいましいトーリー党員にわたしの『歴史』の索引を作らせるな! - 巻末での小競り合い
第6章 フィクションに索引をつける - ネーミングはいつだって難しかった
第7章 「すべての知識に通ずる鍵」 - 普遍的な索引
第8章 ルドミッラとロターリア - 検索時代における本の索引
結び 読書のアーカイヴ
原注
謝辞
訳者あとがき
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