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忘れられた日本人

Mon Jul 22 2024

「忘れられた日本人」宮本常一 岩波文庫 1984

「忘れられた日本人」宮本常一 岩波文庫 1984

民俗学者、宮本常一の代表作。主に宮本常一が戦後、聞き取り調査を行った農村の古老たちの話をまとめたもの+α。

語られている内容は明治から昭和にかけての農村に暮らす市井の人々の日々の営みの中でも個人史や世間話のようなもの。いずれも面白いが読んだ印象は民俗学の本というよりは、もっと文学的な読み物といったほうが近い。有名な橋の下で乞食として暮らす元馬喰の色懺悔とでもいうべき「土佐源氏」は現在では宮本常一の創作であったとする説が有力であるようだが、それはそうかもなという感じ。

村の意思決定機関である寄り合いの実態や、世間師といわれる村と外部をつなぐ共同体の異端的な存在の話や、女達のエロ話や娘の家出の話、ハンセン病患者が人目を避けて旅する山間の道や、芸人は芸を見せれば船代が只とか興味深いエピソードは数知れないが、一番気に入ったのは、長州征伐の際、負けて逃走中の侍に道で出会った農夫が自分の睾丸を触ったら垂れていたので、それなら相手に負けるものではない」と確信したという話。いざというとき自分の金玉の具合を確認するというのは山口あたりでは一般的な話だったんだろうか?


目次

対馬にて…
村の寄りあい
名倉談義
子供をさがす
女の世間…
土佐源氏
土佐寺川夜話
梶田富五郎翁
私の祖父
世間師Ⅰ
世間師Ⅱ
文字をもつ伝承者Ⅰ
文字をもつ伝承者Ⅱ
あとがき

注(田村善次郎)
解説…(網野善彦)


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