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江戸川乱歩座談

Sat Oct 19 2024

「江戸川乱歩座談」江戸川乱歩 中公文庫 2024

「江戸川乱歩座談」江戸川乱歩 中公文庫 2024

江戸川乱歩の生誕130年記念で刊行された、文庫オリジナルの江戸川乱歩の座談・対談・鼎談集。中公文庫から出るというのは意外だが、江戸川乱歩の小説や随筆は現在でも比較的容易に読むことができるが、座談や対談・鼎談などは単行本に収録されることは希で読むことが難しい。現在でも入手可能な光文社文庫版の江戸川乱歩全集には座談や対談・鼎談は収録されておらず、光文社文庫版全集の前に出た講談社の江戸川乱歩推理文庫の64巻は「書簡 対談 座談」ではあるが、収録されているのは本書にも収録されている長田幹産、徳川夢声との対談、佐藤春夫・城昌幸との鼎談の3編のみのうえ1989年刊なので新刊での入手は難しいだろう。それ以前となると言わずもがな・・・

という訳で、江戸川乱歩の座談、対談、鼎談が全て網羅されている訳ではないが、文庫オリジナルである程度まとまった形で書籍化されたのは大変ありがたいことだ。

収録されている中では、「『新青年』歴代編集長座談会」が面白い。博文館の雑誌「新青年」の初代編集長だった森下雨村から横溝正史、延原謙、水谷準といった歴代編集長経験者に、長年、表紙を描いてきた松野一夫らを招いての座談会で、戦後に行われたものだが皆、キャッキャウフフと当時を楽しげに回想しているのが良い。特に横溝正史と松野一夫のくだけた感じの語り口が良い。ちょっとイメージと違う感じの・・・

あと、幸田文との対談「幸田露伴と探偵小説」もすこぶる面白かった。まだ、露伴が探偵小説好きだったという話しは判るけど、幸田文も好きで父親の「新青年」を読んでいたとか、少女時代、父の露伴と来客の様子から来た道のりなどを推理して遊んでいたなんていうシャーロック・ホームズみたいなエピソードまで飛び出して、自分の中での幸田文の好感度が爆上がりですよ。今市子あたりが、少女自体の幸田文と父露伴が主人公の怪異ミステリを書いてくれないかしら。


目次

Ⅰ 座談

 探偵小説座談会 - 大下宇陀児 / 甲賀三郎 / 浜尾四郎 / 森下雨村 1929
 明日の探偵小説を語る - 海野十三 / 小栗虫太郎 / 木々高太郎 1937
 乱歩氏を祝う - 木々高太郎 / 戸川貞雄 / 城昌幸 1954
 探偵小説新論争 - 木々高太郎 / 角田喜久雄 / 中島河太郎 / 春田俊郎 / 大坪砂男(司会)1956
 文壇作家「探偵小説」を語る - 梅崎春生 / 曽野綾子 / 中村真一郎 / 福永武彦 / 松本清張 1957
 「新青年」歴代編集長座談会 - 城昌幸 / 延原謙 / 本位田準一 / 水谷準 / 森下雨村 / 横溝正史 / 松野一夫 1957

Ⅱ 対談・県談

 E氏との一タ - 稲垣足穂 1948
 幽霊インタービュウ - 長田幹産 1953
 問答有用 - 徳川夢声 1954
 幸田露伴と探偵小説 - 幸田文 1957
 ヴァン・ダインは一流か五流か - 小林秀雄 1957
 博の中に住む話 - 佐藤春夫 / 城昌幸 1957
 本格もの不振の打開策について - 花森安治 1958

参考資料

 同性愛文献虎の巻 江戸川乱歩
 論なき理論 大下宇陀児  探偵小説に関する江戸川乱歩の主な座談・対談一覧

解説 <語られる作家>から<語る作家>へ 小松史生子


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