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蛇の道

タイトル:蛇の道
国:日本
公開年:1998年
視聴:2025-01-14 - U-Next
監督: 黒沢清
脚本: 高橋洋
出演: 哀川翔 / 香川照之 / 柳ユーレイ / 下元史朗 / 翁華栄

2024年に黒沢清が柴咲コウ主演でセルフリメイクしたもののオリジナルの方。
香川照之演じる惨殺された娘の復讐を企む男「宮下」と、哀川翔演じる「宮下」の復讐に協力する謎の男「新島」によるクライム・サスペンス。

物語の説明やディテールやエモーショナルな部分をバッサリ削ぎ落としたスタイルは如何にも90年代の黒沢清という感じ。黒沢清はいったん精緻に作り上げた物語をその形状をぎりぎり維持できるところまで削り落としてしまうので質が悪いなと思う。

宮下は殺された娘の復讐に取り憑かれてはいるが、殺された娘を回想することはなく生前のホームビデオの映像と読み上げられる検死報告書の情報としてしか存在しない。劇中、新島が講師をしている謎の教室に通う謎の少女を見つめるシーンがあるが、その表情は生前の娘を思い出しているようにはとうてい見えない。どうように終盤明かされる新島の真相もセリフで簡単に明かされるだけで形式的なものにすぎないし、拉致監禁され拷問されるヤクザの語る内容もどこまで真実なのかは判らない。
機械仕掛けの操り人形のように拉致監禁と拷問が反復され「復讐」が進んでいくようすは白昼夢のようで、カタルシスも何もない虚無感だけが残る。
この映画内で描かれる回想は宮下と新島の出会いの場面だけで、その出会いの回想がラストシーンとなることで、この映画は宮下の無限に繰り返される「復讐」の円環なのではないかという印象を受ける。