昨今の在野研究ブームの立役者の一人である荒木優太による、近代日本のプロレタリア文学アンソロジー。
内容はバラエティに富んでおり、小説だけはなくエッセイや「どうしたら上手に謄写印刷出来るか」共産党のパンフレットに掲載された記事や、パラレタリア文学として太宰や横光利一といった非プロレタリア文学者以外の作家によるプロレタリア文学っぽい作品まで収録されている。
便所に書かれた落書きの報告である府川流一の「便所闘争」や、昨今のフェイクドキュメンタリーテイストの小林多喜二の「誰かに宛てた記録」などは実験小説や前衛小説を思わせる作品で初読なら強烈な印象を受けるだろうが、森話社の「アンソロジー・プロレタリア文学」に既に収録されている作品で既読。
今回、初めて読んだ作品の中では、葉山嘉樹の「寄生虫」が幼い娘に寄生した回虫との奮闘?を描いたプロレタリア文学というより寄生虫文学とでもいうべき内容で面白かった。
あと、村田千代の「ヤッチョラ」もちょっと寓話めいた作品で面白い。
横光利一の「高架線」も既読ではあるが、今回読み直して塚本晋也あたりが映画化したら良いんじゃないかと思った。