ofellabuta

  • 最近買った本
  • 最近読んだ本
  • 最近観た映画
  • プロレタリア文学セレクション

    昨今の在野研究ブームの立役者の一人である荒木優太による、近代日本のプロレタリア文学アンソロジー。

    内容はバラエティに富んでおり、小説だけはなくエッセイや「どうしたら上手に謄写印刷出来るか」共産党のパンフレットに掲載された記事や、パラレタリア文学として太宰や横光利一といった非プロレタリア文学者以外の作家によるプロレタリア文学っぽい作品まで収録されている。

    便所に書かれた落書きの報告である府川流一の「便所闘争」や、昨今のフェイクドキュメンタリーテイストの小林多喜二の「誰かに宛てた記録」などは実験小説や前衛小説を思わせる作品で初読なら強烈な印象を受けるだろうが、森話社の「アンソロジー・プロレタリア文学」に既に収録されている作品で既読。

    今回、初めて読んだ作品の中では、葉山嘉樹の「寄生虫」が幼い娘に寄生した回虫との奮闘?を描いたプロレタリア文学というより寄生虫文学とでもいうべき内容で面白かった。
    あと、村田千代の「ヤッチョラ」もちょっと寓話めいた作品で面白い。

    横光利一の「高架線」も既読ではあるが、今回読み直して塚本晋也あたりが映画化したら良いんじゃないかと思った。

    第一部 文字という重労働
    [エッセイ] 雲母片 宮本百合子
    [小説]誰かに宛てた記録 小林多喜二
    [小説]灰色 前田河広一郎
    [詩]印刷工の歌 活版工場に就いて 山路英世
    [小説]新文化印刷所 大人のための人生の童話 武藤直治
    [小説]謄写版の奇蹟 林 房雄
    [読者投稿欄]便所闘争 府川流一
    パラレタリア文学 ①
    [小説]花火 太宰 治

    第二部 紙は製本されずに世界に散らばる
    [少女小説]欲しくない指輪 徳永 直
    [小説]悪魔 ドストエフスキー 幸徳秋水 訳
    [小説]人間売りたし 鈴木清次郎
    [小説]ヤッチョラ 村田千代
    [小説]穴 黒島伝治
    [パンフレット]どうしたら上手に謄写印刷出来るか(抄) 阿部鉄男
    [小説]アスファルトを往く 片岡鉄兵
    [詩]奪え、奪え何でも奪え ×××××
    パラレタリア文学 ②
    [小説]高架線 横光利一

    第三部 女性にとって革命とはなにか?
    [小説]殴る 平林たい子
    [読者投稿欄]珍らしがられる仕事 大野優子
    [読者投稿欄]小学教員は講談社の社員也 佐藤季子
    [小説]検束のある小説 大田洋子
    [実話]廓日記 松村清子
    [小説]最後の奴隷 平林英子
    [小説]種 壺井 栄
    パラレタリア文学 ③
    [小説]寄生虫 葉山嘉樹

    編者解説 言葉の技術 荒木優太