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  • 立ち読みの歴史

    「調べる技術」の小林昌樹氏による立ち読みの歴史についての本。 「近代出版研究」の創刊号に掲載された論文をもとに書き下ろされたもので、出版史の中では軽視されてきた読み手側の、さらにその中でもほとんど誰も気にもとめていなかったであろう「立ち読み」について着目した一冊であるとともに、「調べる技術」で紹介されていた技術の実践によって書かれた本という側面もある。

    ネット通販やマンガ本のシュリンクの普及と雑誌の衰退で書店での「立ち読み」は廃れていく行為・文化?だと思われるので、完全に忘れ去られる前に書籍という形でまとめられたのは貴重。

    まえがき
     この本からなにがわかるのか
     「調べる技術」を実践したら……
     読書の近代は意外と最近
     立ち読みの歴史は読者の歴史

    零.立ち読みは日本だけ?!──「出版七つの大罪」の筆頭
     洋行した知識人「海外に立ち読みなし」
     「出版七つの大罪」の双璧は立ち
     読みと万引き──先行文献

    一.江戸時代の読書──立ち読み前史
     都市で読書が盛んになった江戸時代
     読者は誰だったか
     「本」は高いものだった
     庶民は本を貸本で読む
     江戸時代の「本屋」
     庶民は「地本」を買う
     絵草紙屋の例

    二.立ち読みが成立する条件
     明治のニューメディア──新聞紙、洋装本、雑誌
     リテラシーが全国民に普及
     本屋も明治初めはまだ江戸式だった
     座売りから「開架」へ
     戦前の書店員用マニュアル

    三.大正七年、宮武外骨の証言
     万引き犯へのリンチ
     立ち読みは明治二〇年代、雑誌屋で始まった──宮武の観察

    四.書店でない「雑誌屋」
     雑誌屋とはどんな場所か
     雑誌部数の増大
     「開架」だった雑誌屋
     絵草紙屋が雑誌屋になった
     帝国万歳! 絵草紙屋万歳!
     雑誌屋の店頭で

    五.「立ち読み」の意味を整理する
     立ち読みはホントに海外にないの?
     「逆欠如」という考え方
     「立ち読み」の一般的な定義
     立ち、座りといった姿勢はコアの要素でない
     顧客になるポテンシャルがあること
     ハタキは……?
     何を「立ち読み」していたのか
     制限時間は30分?──昭和一〇年頃、神保町で
     browse は「立ち読み」か?
     欧米書店には雑誌がない?
     習俗としての「立ち読み」
     「立ち読み」とは──本書における定義

    六.「立ち読み」という言葉はいつからあったのか
     「立ち読み」という言葉
     江戸の露店
     立ち見か、立ち読みか
     上位語「冷やかし」と「ヤホン」
     音読がデフォルトだった
     雑誌の発行部数という条件
     冷やかし、タダ見、立ち見、立ち読み

    七.江戸の「立ち見」から「立ち読み」の発生まで──立ち読み通史1
     絵草紙屋における「立ち見」──「立ち読み」前史
     「立ち見」は明確に客でない
     「立ち読み」は本質的に近代的な行為
     明治二〇年代半ば──雑誌屋における「立ち読み」の発生
     新潮社は立ち読みから始まった?──明治三〇年代の立ち読み実践例
     明治三〇年代後半──雑誌が立ち読み癖のついた庶民を書店に引き入れた
     万引きの摘発と立ち読みの黙認

    八.書店が「開架」したいきさつ──立ち読み通史2
     明治二五年頃──中西屋(丸善)、東京堂、三省堂
     有斐閣は大正元年に遅れて開架になったが……
     大正初年──がらりと変わった中型店・地方書店
     半開架──地方大型店の陳列形態
     東京市区改正事業で陳列販売法が広がる
     小書店の店内
     勧工場の「みせだな」
     野生の(?)開架
     露店の古本屋
     古本市場における雑誌

    九.「雑誌の時代」とその終わり──立ち読み通史3
     明治後半から雑誌が普及する
     大正期、地方書店でも立ち読みが広がる
     高度成長期に規定された昭和像
     万引きで閉店した店?!
     立ち読み防止機(シュリンクパック)の登場──昭和五四年
     万引き防止機の登場──一九九〇年代
     新古書店で立ち読みが広がった30年

    十.「立ち読み」に似て非なるもの
     カルチェラタンにつながっていた「丸善の二階」──特定階層がする立ち読み
     一九九〇年代の新サービス「座り読み」
     ネット書店──店頭「立ち読み」に似ているが……

    まとめ

    立ち読み年表
    あとがき
    もっと読書史を読みたい読者に
    図版出典