Note:
日本における「害虫」という概念の成り立ちとその対策の歴史についての本。
1章は、近世日本における農業と「虫」との関わり。
2章は、農業の観点から。
3章は、公衆衛生の観点から。
4章は、戦時下における防疫や化学兵器との関連から。
個人的には3章と4章がいろいろ興味深かった。
特に日本統治時代の台湾における日本に昆虫学者関連の記述はもう少し深掘りしてみたい感じ。
害虫というとゴキブリを連想するが、ゴキブリに関する記述はほとんどない。それはゴキブリが害虫として大きく問題となったのは戦後に入ってからの話で、この本が取り上げている近代から第2次大戦の期間ではほとんど問題視されていなかったからとのこと。「害虫」とは人の暮らしや社会との関わりで位置づけられるもので、時代や地域によって「害虫」もまた変わるという良い例。
戦後、高度成長期に入りゴキブリが「害虫」としてクローズアップされるようになった経緯についても読んでみたい。
