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  • 害虫の誕生 - 虫からみた日本史

    日本における「害虫」という概念の成り立ちとその対策の歴史についての本。
    1章は、近世日本における農業と「虫」との関わり。 2章は、農業の観点から。 3章は、公衆衛生の観点から。 4章は、戦時下における防疫や化学兵器との関連から。

    個人的には3章と4章がいろいろ興味深かった。
    特に日本統治時代の台湾における日本に昆虫学者関連の記述はもう少し深掘りしてみたい感じ。

    害虫というとゴキブリを連想するが、ゴキブリに関する記述はほとんどない。それはゴキブリが害虫として大きく問題となったのは戦後に入ってからの話で、この本が取り上げている近代から第2次大戦の期間ではほとんど問題視されていなかったからとのこと。「害虫」とは人の暮らしや社会との関わりで位置づけられるもので、時代や地域によって「害虫」もまた変わるという良い例。

    戦後、高度成長期に入りゴキブリが「害虫」としてクローズアップされるようになった経緯についても読んでみたい。

    第1章 近世日本における「虫」
     日本における農業の成立
     江戸時代人と「蝗」
     虫たちをめぐる自然観

    第2章 明治日本と“害虫”
     害虫とたたかう学問
     明治政府と応用昆虫学
     農民VS明治政府
     名和靖と「昆虫思想」

    第3章 病気―植民地統治と近代都市の形成
     病気をもたらす虫
     植民地統治とマラリア
     都市衛生とハエ

    第4章 戦争―「敵」を科学で撃ち倒す
     第一次世界大戦と害虫防除
     毒ガスと殺虫剤
     マラリアとの戦い