ofellabuta

  • 最近買った本
  • 最近読んだ本
  • 最近観た映画
  • 残穢

    著者である小野不由美自身を思わせる小説家の「私」が読者から届いた怪異体験の手紙に興味を持ち調べていくというフェイクドキュメンタリー仕立ての怪異小説。
    怖いか怖くないかというと怖くない。人が死んだりするのは調査の過程で浮かび上がる過去の出来事で、語り手であたる「私」やその周辺の人間に降りかかるのは異音を聴いたとか、幽霊のようなものを見たとか、体調が悪くなるといった本当に「怪異」によるものかそうでないか定かではないものばかりだし、怪異の真相に近づきはするも解明する訳でも解決するわけでもない。これ以上踏み込んではいけないというポイント・オブ・ノーリターンの手前で調査を打ち切られ物語は終わってしまう。しかし、そのカタルシスも何もない展開がフェィク・ドキュメンタリーという手法と相まって、本当に怪異に触れるということはこのようなことなのかもしれないという圧倒的なリアリティを生んでいる。

    実話怪談的なホラーが説明を放棄することで怪異を宙づりにしているが、本作における怪異は説明しつくしてもなお着地することのない語りえぬモノとして描かれていることが興味深い。