Note:
文字を持たない社会に対する7つの疑問を起点に、20世紀初頭まで文字を持たなかった東シベリアに住むサハ族の暮らしを中心に無文字社会の文化を知るというもの。
現代文明社会に対して劣っていると見なされる無文字社会にも豊かな文化があります。という良くあるナイーブな内容で、文字を持たない社会がどのような文化・社会についてあまり本質的な内容はない。単純に考えても文字を持たない社会は持つ社会に比べて知識の継承という点では大きく不利であるし、おそらく高度に抽象的な概念の発展にも障害であるだろうが、そういう話はない。
また、中で識字率の話がちょくちょく出てくるが識字率が低い社会だからといって無文字社会であるかというとそういう単純な話でもないだろう。江戸以前の日本の識字率はそれほど高いものではなかったが当時の日本を無文字社会と呼ぶ人はいない。サハ族に関しても20世紀初頭にサハ語固有の文字を持つようになったとのことだが、それ以前よりロシアの通貨などが流通していたとのことで文字という概念がなかった訳ではないだろうしロシア語とその文字の文化的な影響度を無視して良いのかという疑問もある。
サハ族の文化を知るという意味では良い本だが、無文字社会について考える手がかりとしてはすこし物足りない。
