ofellabuta

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  • 謎ときエドガー・アラン・ポー 知られざる未解決殺人事件

    ポーの短編「犯人はお前だ」への新解釈を提示する本。
    「犯人はお前だ」はラストの死体が突如動き出し犯人を名指しするという仕掛け以外あまり見るところのない作品という認識を覆すもの。著者の竹内康浩は冒頭に提示されるオイディプスの名をはじめとした些細な違和感と作中の矛盾を検証し、作中明示的に描かれることのない未解決のままにされた殺人事件の謎を解き明かしていくという文芸評論なのにほとんどミステリ小説のような内容。読んでいて子供の頃読んだ高木彬光の「成吉思汗の秘密」のようなエキサイティングかつ説得力のある検証とほんまかいなという胡散臭さがない交ぜになった感覚を思い出した。

    後半は、前半の「犯人はお前だ」を読み解いた方法を、ポーの「モルグ街の殺人」や「アッシャー家の崩壊」や「黒猫」といった他の作品にも適用して読み解いていく構成で、著者が注目するオリジナルとコピーの鏡像的な関係が「犯人はお前だ」の独創的な解釈の是非をともかくとしてもポーの創作における重要なファクターであることは間違いなさそう。

    あまりの面白さに一晩で一気読みしてしまった。

    同じ著者の「謎ときサリンジャー」も是非読みたいが、サリンジャーは全く読んだことないんぢょなぁ。

    まえがき

    序章――「犯人はお前だ」全文訳

    第一章 挑発
    オイディプス/なぜか真相を知らぬ村人たち/検討されない前提/二つのイタリクス/幻のワインの会話/謎の出題/手紙の日付と署名

    第二章 矛盾
    捜索を渋るグッドフェロー/語り手の変遷と屈折した計画/ペニフェザーとD大臣/村人たちの記憶力

    第三章 未解決殺人事件
    裏返された密室殺人/叙述トリックの核心/二つの死体/Here’s What Happened

    第四章 鏡像
    怪しい二人/半端な試み/半端な語り手/マトリョーシカ/ポー自身の「書き間違い」/敗者の盲点

    第五章 もう一つの完全犯罪
    「のこぎり山奇談」あらすじ/半回転すること/謎解きの試み/読者としての語り手/二つのフィクションあるいはコピー/腹話術としての催眠術

    第六章 デュパンの誕生
    ホームズの誤謬/侵入と脱出/窓のトリックと鏡像縛り/なぜオランウータンとデュパンは双子か

    第七章 アナリシスとアナロジー
    子供のゲーム/犯罪者としてのデュパン/アナロジー

    第八章 謎のカギをひねり戻す
    アッシャー家は崩壊したのか/「ウィリアム・ウィルソン」の腹話術師/「黒猫」の謎は解けるのか

    あとがき
    註解
    解説――メタ物語の楽しみ 巽 孝之