「ダッチワイフ」伴田良輔 皓星社 2018
皓星社のアンソロジーシリーズ「紙礫」の一冊で「ダッチワイフ」をテーマにしたアンソロジー。選者はこの手のテーマではお馴染みの伴田良輔。
収録作は小説だけなくマンガや映画脚本、詩、短歌と幅広いジャンルから選ばれているが、裏を返すとアチコチからかき集めてくるしかなかったということもかもしれない。
収録されている井上友一郎の「竹夫人」などはセックスドールとしてのそれではなく、本来の意義である夏向けの竹製抱き枕としての「竹夫人」であって、テーマ的にちょっと微妙な感じがする。
谷崎の「青塚氏の話」は人形愛というよりも、女体フェチの行き着く先としての人形という感じで谷崎らしい傑作。収録作の中でもやはり頭一つ抜けた出来のように思えた。
北岡虹二郎の「人形はなぜ作られる」は高橋鐵の雑誌「あまとりあ」に掲載されたもので、 作者の北岡虹二郎は詳細不明の謎の作家。死んだ妻をイメージしてダッチワイフを作り続けるダッチワイフ職人の話。
大和屋竺の「荒野のダッチワイフ」は1967年の制作されたピンク映画の脚本。ある殺し屋が誘拐された女の救出を依頼されるが、その誘拐版はかつて自分の恋人を殺した男だったという話で、これもあまりダッチワイフ関係ない。
業田良家の「空気人形」は是枝裕和の映画「空気人形」の原作で、これと津原泰水の「たまさか人形堂物語」の一篇「恋は恋」の2作は真っ正面からダッチワイフを扱った作品。津原泰水ってほとんど読んだことがないんだけど、こういう軽めのタッチの作品も書く人なんだな。
目次
巻頭歌 黒田和美
竹夫人 角田竹夫
和蘭妻 -ダッチ・ワイフ- 丸木砂土
竹夫人 井上友一郎
青塚氏の話 谷崎潤一郎
人形はなぜ作られる 北岡虹二郎
荒野のダッチワイフ 大和屋竺
やけっぱちのマリア(抄) 手塚治虫
空気人形 業田良家
恋は恋 - 「たまさか人形堂物語」(抄) 津原泰水
アリスマトニカ 伴田良輔
解説 - 肉体から心への終わりのない旅 伴田良輔
著者紹介
初出一覧
Amazon : 「ダッチワイフ」伴田良輔 皓星社 2018