「透明マントの作り方」グレゴリー・J・グバー 水谷淳:訳 文藝春秋 2024
「ハリー・ポッター」に登場する「透明マント」や、「攻殻機動隊」の光学迷彩のように、物体を「不可視化」、人間の目に見えなくなるようにする技術や理論の可能性について論じた読み物。
著者のグレゴリー・J・グバーは、ノースカロライナ大学シャーロット校の物理学・光科学の教授。
物体の不可視化について、そもそも「不可視」とはどのような現象なのかというところから始まり、電磁波を含む光の科学史を辿りながら不可視化の理論とその技術の可能性について述べていく構成。本書の半分以上を占める「光」についての科学史の部分はまったくの初心者(光と電波の関係とか原子の構造とかそういうレベル)でも読み進めていけるような内容だが知ってる人にはちょっと退屈に感じられるかもしれない。
後半、本格的に「不可視」の話に入っていくと俄然面白くなってくる。
「不可視化」が単に理論上の可能性の話だけなく、限定された波長ではあるが実証実験が行われるレベルまで進んでいて、既に人間は「不可視化」の実現に向けてのとば口にいるという事実に驚かされるし、たんにモノを見えなくするだけではなく、その理論・技術の応用の先にあるもの(光と同じく波であることから大波や地震に対する防災に応用可能なのではないか等)には心躍らされる。
古い言い方ではあるが、まさに「センス・オブ・ワンダー」を感じさせる一冊。
目次
第1章 私が予想を外したこと
第2章 「不可視」とはどういう意味か?
第3章 科学とフィクションの出合い
第4章 見えざる光線、見えざる怪物
第5章 波動光学の新時代
第6章 振動する光
第7章 磁石と電流と光
第8章 透明人間生まれる
第9章 原子の中には何があるのか
第10章 量子を疑う最後の大物
第11章 物体の内部を可視化する
第12章 わが師ウルフが狩っていたもの
第13章 自然界に存在しない物質
第14章 透明マント現る
第15章 奇妙な仕掛け
第16章 隠すだけじゃない
附録A あなたにも不可視化デバイスが作れる!
附録B 不可視性をテーマにした小説のリスト
謝辞
訳者あとがき
注
参考文献