「デムーリン・ブラザーズの華麗なる秘密結社グッズカタログ」ジュリア・スーツ 宇佐和道:訳 ヒカルランド 2022
アメリカ、イリノイ州にある世界最古かつ最大のマーチングバンド用ユニフォームメーカーであるデムーリン・ブラザーズ社が、19世紀末から20世紀初頭にかけて当時アメリカで広く普及していた秘密結社・友愛結社むけに製造・販売していた入会儀式などで用いられる様々なアイテムを当時のカタログから紹介した本。
当時、数多の秘密結社、友愛結社が存在したが、その実態は「秘密結社」という名称からイメージするような神秘主義的なものではなく、日本でいうところの「無尽」や「講」に近いローカルなコミュニティの相互扶助やコミュニケーションの場に近いものだった。だが、その存在はクローズでメンバーになるためにはイニシエーションとしての入会儀式を受ける必要があるのが常だった。入会儀式では結社に対する忠誠や誠実さ、勇気を示すという名目で様々な試練が与えられそれを克服することが求められたが、通常、それらは本物ではない安全に配慮されたいわば入会者に対するドッキリとして実施された。
デムーリン・ブラザーズ社は、結社向けのユニフォームやグッズを製造販売する傍ら、そのようなドッキリとしての入会儀式をはじめとした催しに使用する様々なアイテムを考案・販売しており、それらの商品を図版入りのカタログとして顧客である結社に送付していた。取り扱う商品は手品の小道具的なものから、ドリフターズのコントみたいな大がかりな仕掛けまで幅広い。
本書はそのカタログからとりわけ珍妙な商品の図版と解説をより抜いたもので、実際に販売された製品を元にしたものではないという点がポイント。この手のジョークグッズは現物を手にすると広告とは違うそのショボさにガッカリするというのがお約束なので、あえて実際の商品ではなくカタログでの記載に留めているというのは手抜きというようり慧眼とすべきだろう。
正直、取り上げられている商品を見ると果たして本当に売れたのか疑問に感じるものも少なくないが、デムーリン・ブラザーズ社は当時これで大もうけしていたそうなのでそれなりに売れていたのだろう。ヨーロッパ起源とのフリーメーソンリーなどとは少し異なるアメリカン友愛結社カルチャーの一側面なのだろう。
目次
序文(デビッド・カッパーフィールド)
はじめに
第1章 デムーリン兄弟 来歴と人生
第2章 友愛団体の基礎知識 団体、ロッジ、メンバー
第3章 お楽しみ 「第二義的な仕事」
第4章 工場生まれのヤギ 分類不可能なヤギ属の数々
第5章 法廷でお会いしましょう 散々なイニシエーションと法の目
第6章 ビリビリ! 電気ショックグッズ
第7章 ドカン! ガシャーン! パシャッ! 機械仕掛けのあれこれ
第8章 ワードローブ! 着るものいろいろ
参考文献・サイト
図版出典一覧
カタログ一覧
訳者あとがき
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