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作家とおしゃれ

Fri Oct 04 2024

「作家とおしゃれ」平凡社編集部:編 平凡社 2024

「作家とおしゃれ」平凡社編集部:編 平凡社 2024

「おしゃれ」をテーマにしたアンソロジー。平凡社のアンソロジー「作家と××」シリーズの一冊。収録されている作家は芥川龍之介や菊池寛から、三島由紀夫や檀一雄といった戦後の作家、村上春樹や川上未映子、村田沙耶香といった現代文学の人、柳田国男や今和次郎、宇野亜喜良、会田誠といった文学以外の人や、長谷川町子や望月峯太郎のような漫画家まで幅広いく、収録されている作品は極短いエッセイの類いでちょっとした隙間時間に読み進めていける。軽めのアンソロジーとしてはすごく良いのではないかと思う。唯一、気になった点をあげるとすれば、出典の記載はあるが初出の情報が抜けてる点であろうか。ファッションの話なので、戦前なのか戦後なのか、戦後でも60年代なのか70年代なのか、その作品が何時書かれたものなのかというは(まぁ、作者の活動時期と内容から大体のところは見当が付くかもしれないけれど)重要なので、その情報が欠けているというのは気になった。

あと、選者が編集部ということか、収録作が多いためか、「解題」がないのも淋しい。選者による解題はアンソロジーを読む楽しみの一つだと思う。

収録作の中では、戦前の詩人である田中冬二の「新しい沓下」という詩が良い。

今日私は新しい沓下を穿いているのだと/その感情がわずかに悲しい心を/制してくれる

この新しい沓下の持つ特別な感じが好きだ。子供の頃、大晦日の夜に開けた正月に着るために買った晴れ着とまではいかないがまだ袖を通していない新しい服を一揃い枕的に畳んで眠りにつくあの時の高揚感を思い出す。

あと、久しぶりに読んで、森茉莉と川上未映子の文章の気持ち良さを再確認した。


目次

1 毎日のおしゃれ
服装語彙分類案 柳田國男
履物とガラス玉 佐多稲子
正しいアイロンのかけ方 村上春樹
新しい沓下 田中冬二
センスのよいきものの着方、えらび方 宇野千代
サザエさんの洋服/『サザエさん』より 長谷川町子
服装の合理性 石原慎太郎
働くために 宮本百合子
春着の仕度 河野多惠子

2 お気に入りの逸品
鞄 吉行淳之介
このごろ 幸田文
フィレンツェの赤い手袋 小川洋子
時計 室生犀星
『没有漫画没有人生』より「シューゲイザー」 望月ミネタロウ
レインコートの美 森茉莉
帽子 江國香織

3 とっておきのよそいき
すてきなお化粧品売り場 川上未映子
誓いの色を着た日 村田沙耶香
洋服オンチ 三島由紀夫
私のびろうどの靴は 林芙美子
劉生日記 大正九年 岸田劉生
旅のよそおい 檀一雄
無欲・どん欲 沢村貞子

4 こだわりの着こなし
「俺様ファッション全史」より 会田誠
わが服装哲学 森敦
「服装に就いて」より 太宰治
ピアスの穴 米原万里
買物 菊池寛
外套 江戸川乱歩
映画のなかのシャツ 宇野亞喜良
自分の色 白洲正子

5 夢に見たあのスタイル
GOTHIC & LOLITA GO WORLD 嶽本野ばら
夏帽子 萩原朔太郎
夢の女の夏衣 厨川蝶子
リボン 竹久夢二
着物 芥川龍之介
るきさん 高野文子
羽織・袴 久保田万太郎
衣裳と悦楽 花柳章太郎

6 流行りをたのしむ
『青豆とうふ』より 安西水丸
洋服論 永井荷風
学生ハイカラしらべ 今和次郎
茶色い背広 吉村昭
銀座漫歩の美婦人三例 小村雪岱
好きな髷のことなど 上村松園
『かの子抄』より 岡本かの子

著者略歴・出典


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